最低賃金引き上げについて
以前顧問契約を結んでいた事業所で、社員の基本給(月額)を決めるにあたり、最低賃金に年間所定労働時間を乗じた金額を12で割った額としていた事業所がありました。そのため、最低賃金が見直しとなる10月に全社員の基本給の引き上げ(昇給)を行っていたのですが、人事・労務管理を請け負っていた立場として、複雑な思いをしていたことも確かでした。
というのは、基本給を決める要素について、年齢や家族構成といった属人的な面はもちろんのこと、入社年次や職務遂行能力といったスキルが一切反映されていないということになります。ちょっと乱暴な言い方をすれば、新入社員も中堅社員も、スキルの有無も関係ない一律の基本給となっているわけで、社員のモチベーションを考えると決していい制度とは言えません。もちろん、人件費については経営的な観点から経営者が決めることですが、こういった仕組みでは、長期的な社員の定着や成長を期待することは難しく、実際定着率は決して高くありませんでした。
また、こういったケースでは、大概社員の基本給とバイトの時給が逆転ということが起こりがちです。「社員については社会保険料の会社負担分を払っているので、それもある意味給料と考えている」という意見も一理あります。同一労働同一賃金の議論もありますが、少なくとも逆転は解消するべきと当時は感じていました。
ちなみにこちらの事業所の賃金規程には、昇給については「従業員の勤務成績・勤続年数に基づき決定し、原則として毎年4月に実施する」と規定されていました。今にして思えば、当規定に基づいたコンサルティングが実現できなかったことについては、当事務所にも責任の一端があるのかもしれません。
2023年08月01日 12:37