今ある「きまり」を守ることが問題解決の近道です
以前にもこのブログで取り上げましたが、残業の大きな問題は「サービス残業」にあっていくら時間を決めてもあまり意味がないのではないでしょうか。サービス残業を生じさせている原因としてはおもに、
①正規の手続きを踏まない一方的な「裁量労働制」
②労働基準法第41条該当者の拡大解釈によるもの
③勤務時間のカット
④労働者が自分の意思で残業をつけない
があります。①の裁量労働制とは、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ労働者と使用者で決めた時間分働いたとみなして賃金を払う制度です。1日9時間と定めれば、実際に働いた時間が5時間でも、12時間でも賃金は9時間で計算されます。対象となる業種は限られますが、この裁量労働制を導入するには労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出が必要になります。しかし、実際には協定を結ばず、使用者側から一方的に「うちは裁量労働制を導入しているから残業はつかないよ」として残業をカットしている場合が該当します。
②の労働基準法第41条該当者とは、管理、監督者・機密の事務を取り扱うもの、いわゆる管理職については労働時間の制限の対象外になるというものです。企業によってはこれを拡大解釈して、管理職らしい肩書を付けることで労働時間を規制を外してしまう、残業手当を払わないという場合があります。本来要求される「管理職」の条件とは、
【1】重要な職務と権限が与えられていること
【2】出退勤に関し、自由裁量が認められていること
【3】賃金について管理監督者に相応する待遇であること
が求められます。特に【3】については、管理職でなければ支払われるべき残業手当以上であることが必要で、「管理職になったら給料が下がった」というのは違法ということになります。しかし、【1】から【3】に該当しない、いわゆる「みなし管理職」としてこの制度を利用して、残業時間・残業手当の対象外としている企業は数多くあるのが現実です。
③については、論外です。労働時間の実績をカットするというのはあってはならないことですが、現実はまだまだあります。
④は労働者の意思によるものですが、そうせざるを得ない根本的な理由があるはずでこれを解決する必要が企業には求められます。
共通して言えることは、ちゃんと労働基準法を守ることです。政府が時間外の上限を定めようが、今の労働基準法を守ればいいことなのです。
小手先の対応ではなく、今ある「規則」を守るということが一番の近道です。
※写真は京都御所の秋の名残です(京都市上京区)
2017年01月30日 05:10