通勤手当が増えると手取りの給与が減るかもしれない
その理由は「通勤手当」です。多くの人は会社から通勤に必要な電車やバスなどの交通費が支給されています。会社によっては、定期券などの現物支給や相当金額の現金支給とその方法は異なりますが、いずれにせよ、通勤に使われるため私たちの手元には残ることはありません。
しかし、この「通勤手当」の扱い、社会保険料を計算する際には、「給与」として扱われています。社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)は、労働者が受ける給与(社会保険に関する法律では報酬といいます)をベースに標準報酬額を決定し、この標準報酬額に保険料率を乗じて保険料を計算します。この「給与」は法律では、「賃金・給料・手当・賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」とされており、通勤手当だけでなく、家族手当や住居手当等も含まれています。そのため、例えば念願のマイーホームを郊外に手に入れ、通勤距離が遠くなったことで定期代が増えると、社会保険料が増え、結果として手取りの給料が減るということが起こり得るのです。
家族手当や住居手当とは違い、自分の手元に入ってこない通勤手当が保険料計算の給料に含まれる、納得できないですよね。ちなみに、所得税額の計算時には含まないことになっているのでなおさらです。なぜ、こんなことになっているのか? これには実に昔の官僚の見解が踏襲されています。昭和27年12月4日付の厚生省保険局健康保険課長からの通達で「通勤費は毎月の通勤に対して支給され、通常の生活費の一部に充てられている以上、当然報酬とするのが妥当」とされたものが延々と引き継がれているのです。う~ん、確かに生活費を得るために必要な費用といわれればそうかもしれませんが、釈然としません。
「所得税はあくまでも労働の対価として得た所得に対して課税するもの、社会保険料は社会で生活するために必要とされる経費に応じて支払うもの」と、以前に経済紙で読んだことがあります。統一できないものでしょうかね。
※写真は真如堂境内にて(京都市左京区)
2017年03月23日 05:30