退職時に有給休暇の一括取得はできる、できない?
1ヶ月ほど前ですが、あるお客様から「退職時に有給休暇の一括取得を求められたが、業務多忙を理由に拒否できるか」という相談がありました。理由はともかく、こういったケースは結構あります。私も前職のとき、たびたび労使で揉めた間で悩んだ経験があります。
まず、有給休暇については、労働者側には取得する権利と使用者側にはこれを付与する義務があります。また、使用者には労働者から請求された時季に与えることが、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、時季を変更する権利(時季変更権)があります。ただし、単に忙しいからとか、人手が足りないといった程度では時季変更権は認められず、また退職時の請求のように、変更できる期間に余裕がない場合にはそもそも変更できない場合があります。
使用者はもし労働者から一括取得の請求があった場合、これに応じるのが原則です。「取る」「認めない」で最後に気まずい思いをするのではなく、まず労使の話し合いで、退職にあたっての引き継ぎや残務整理の業務量を明確にしましょう。その上で退職日までに一括取得ができないという場合、以下の調整が考えられます。
➀退職日を変更する
②退職日は変更せず、有給休暇の残日数を買い取る
有給休暇の買取は、行政通達で禁止されています。(昭30.11.30基収4718号)
しかしこれは、「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて年次有給休暇の日数を減じ、又は請求された日数を与えないこと」を禁止しているのであり、退職時にどうしても消化できない有給休暇の買取を禁止しているものではない、というのが解釈です。この他、就業規則等で法定日数を超える有給休暇を与えている場合に、その超える分を買い取ることも認められています。
なお、法律には何も明記されていないので、会社に買い取りの義務はなく、また買い取る場合に一日幾らとするかも会社の定めるところによります。まずは会社の規程等で、有給休暇の買取をするしないを定め、する場合にはいくらで買うのか、しない場合には退職日の変更をすることもある、等を決めておいた方がよいでしょう。
※写真は関西電力夷川発電所(京都市左京区)
2017年05月01日 08:04