今や、終身保険は貯蓄にあらず
終身保険、普段あまり使うことのない言葉ですが、一言で言えば必ず保険金がもらえる保険です。終身=死ぬまで、保険=保障するという意味です。例えばご主人を被保険者として受取人が妻とする500万の終身保険に加入した場合、1ヶ月後でも30年後でも、死亡した時に500万円が支払われます。人間いつかは亡くなりますから、保険料が無駄になることはありません。
これに対して、定期保険というものがあります。こちらは一定の期間に死亡した時に保険金がもらえる保険です。定期=あらかじめ定めた期間を、保険=保障するという意味です。5年とか、10年といった期間が多いケースですが、この期間に何事もなく経過すれば保険金は支払われませんので、保険料は掛け捨てになります。
この2つの保険、保険会社から見れば、かならず保険金を支払う終身保険の方が、多く保険料をもらっておく必要があります。逆に払わない可能性のある定期保険については保険料は少なくてもいいということが言えます。ということで、保険料は終身保険の方が相当分高くなっています。
さて、ここからが本題ですが、終身保険はいずれ保険金の支払いが必要ということで、保険会社は契約者が払った保険料を運用し、その支払いに備えます。また途中で保険の解約があった場合、支払いに備えたお金から必要な経費などを控除して契約者に返還されます。これが解約返戻金といわれるものです。
この解約返戻金、支払った保険料から保険会社の収益や事務コスト等に相当する分が控除されるため、その分支払った保険料より少なくなります。特に契約してそれほど期間が経っていない場合には、結構厚めに控除されます。ところが、保険会社は支払われた保険料を運用していますので、その収益分は解約時には逆に加算されます。銀行預金でいえば、利息を受け取るようなものです。
簡単に式で表すと、
解約返戻金=支払った保険料の総額ー保険会社の収益や事務コスト+運用収益
となります。
かつてはこの運用収益が大きく、一定期間経過した後の解約の場合、払い込んだ保険料を上回る解約返戻金が支払われました。これが、「終身保険は保障と貯蓄を兼ね備えた商品」といわれたゆえんです。ところがマイナス金利以降、保険会社は運用収益を得ることが難しくなっており、今はほとんどの保険会社の終身保険では、解約返戻金が支払った保険料を超えることはありません。(保険料を一括で支払う商品は除きます)
終身保険に限らず、保険は万が一のリスクに備えるもの、貯蓄は必然のリスクに備えるものという割り切りが大切です。
2017年08月04日 07:50