がんになった時に使える社会保障制度
この集まりに参加するのは今回で3回目、きっかけはケースワーカーの方のお誘いを受けたことです。この会の約束事の一つが「営業的な言動はしない」ということもあり、私はあくまでも「勉強させていただく」という立場で参加しています。
勉強会のあとには、患者さんやその家族と医療関係者が参加する懇親会があります。その中である患者さんから、「経済的に利用できる社会保障制度があれば教えてほしい」という質問がでていました。実はあまり知られていないのでしょうか、少し意外でした。
出産や介護と異なり、がんに特化した休業制度や社会保障制度による給付金というのはありません。が利用できる可能性があるものとしては次のようなものがあります。
【傷病手当金】
組合健保や協会健保の被保険者であれば、入院や治療のために休業し、労働することができないとき、4日目から1年6か月の期間で労働しなかった日について受給することができるものです。支給額は標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1)の3分の2ですが、賃金を受けると減額されます。
【介護保険制度】
40歳以上の場合、公的介護保険制度を利用することができます。この制度を利用するには、市町村に申請し介護認定を受ける必要があります。また、65歳未満(第2号被保険者)の場合、末期がんであることが条件になります。受けることができるサービスの種類や限度額は、介護度によって異なります。
【障害年金】
がんと診断されてから1年6ヶ月を経過した日(障害認定日)において、一定の障害状態に該当すれば、障害年金(1~3級)もしくは障害手当金を受給することができます。ただし、保険料納付要件等の条件を満たした上で、大まかな障害の程度として、労働することができない、もしくは大きくその能力が失われていことが前提になります。また、65歳以上で既に他の年金(老齢年金)を受給している場合には、障害年金を受給することはできません。がんで障害年金を受けるには他の疾病や障害に比べると、ハードルが高いとも言われます。
他に、健康保険の高額療養費制度の利用や、限定的ですが石綿(アスベスト)健康被害給付、生活福祉資金貸付制度、生活保護の利用も検討できます。法律的にはいろいろな条件があり、「がん」ということで特例がある訳ではありませんが、使える制度は最大限活用する権利があります。
「患者さんってなぜか遠慮する傾向があるんです。でも今まで保険料払ってきたんだから、使っていいんです」というのはドクターのお話、その通りです。
※写真は京都御幸町教会(京都市中京区)
2017年09月28日 08:59