最近相談を受けた労使問題から~(1)
【Question 1】
病気で出勤がままならない社員がいる。長期欠勤が続き、復帰後にしばらくするとまた長期欠勤が何度か続いている。就業規則の休業規定に従い、一定期間の休職と半額程度の賃金を支給したが、いよいよその期間も使い果たしてしまう。会社としては解雇を検討しているが問題はないか。
【Answer 1】
まず、欠勤の原因となっている病気が何が起因となっているかをはっきりする必要があります。もし、業務上による場合には、労災が認められれば休業補償給付や傷病補償年金を受給することができます。また、業務上の場合には療養のために休業する期間とそののち30日間は解雇することはできません(労働基準法第19条)。ただし、療養開始後3年を経過してもなお治癒しない場合には、平均賃金の1200日分の打切補償を行うことで解雇することができます(労働基準法第81条)。なお、就業規則に定める休職期間は私傷病を原因として休職することが前提となっているため、業務上の場合にはこの休職期間はそもそも該当しません。
業務上でない場合には、上記のような制限はないため、解雇することは可能です。ただし、病気による欠勤が懲戒事由には該当しないため、懲戒解雇ではなく通常(自己都合)退職として扱うことになります。もし、就業規則に定める退職金の支給基準に該当するのであれば、支給する必要があります。
【Question 2】
会社の残業指示に従わずに定時になると帰宅してしまう社員に対して、どういった対応が適切か。
【Answer 2】
まずは、その理由を聞き取ることから始めるのがベストです。いきなり処分では感情的にエスカレートしかねません。表には出したくない、社内で知られたくない個人的な事情があるかもしれません。その事情次第では労使双方が歩み寄れる解決が可能です。ただし、もしその事情が利己的なものであれば、会社から正式な形で業務命令としての残業を命ずることが必要です。この場合にもし36協定を労使間で締結しているのであれば、その内容を説明することもポイントです。
このような経緯を踏まえても、一向に改善しない場合には、就業規則の懲戒事由に「業務命令に従わない場合」に関する規定があれば、これによって懲戒処分、場合によっては解雇することもなむをやむを得ないと思われます。
いずれもどの企業でも起こり得る問題です。特に【Question 1】の場合には、最近増えている精神上の疾患(うつ病等)が、業務上と認められると同様の扱いとなります。うつ病などの精神疾患は業務上外の認定が難しく、厚生労働省はその認定基準を公表しています。人事や総務担当者には参考になるかと思いますので、ご参考までに。
「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を策定」についての厚生労働省の資料はこちら
※写真は摩利支天堂境内にて(京都市東山区)
2017年11月03日 10:20