電通に関する2つの報道から
1つ目の責任に関する問題、今回マスコミ等が非常に大きく問題を取り上げたことや世論の高まりも影響して、厚生労働省(労働基準監督署)は異例の速さで電通への立ち入り調査から起訴へと進みました。しかし、裁判の結果は、会社としての責任(労働基準法違反)は認めたものの、役員や現場の上長、管理者といった個人については全員不起訴となりました。この結果、「疑わしきは罰せず」なんでしょうか。何とも歯がゆい思いです。
どこまでが「労働時間」かという判断は、過去の判例等では「会社(使用者)の指揮命令配下にある時間」というのが基本的な考え方です。結局、「誰の指示によって、どこまでこの指揮命令下にあったのか」あるいは「そもそも指示があったのか」を証明することが難しかったいうことが大きな理由のようです。例えば工場の組み立てラインでの作業のように、支配管理下にあることが明白であるケースと違い、電通のような業種ではその境界を明確にすることが難しいというのは確かです。また、指揮命令とは関係なく、自分の意思で、あるいは敢えて超過勤務をすることでその対価を得ようとする人がいることも事実です。
そのような時間はむしろ排除する必要があるのですが、さて過去にさかのぼってその判断ができるかということになってしまいます。ただ、仮に自分の意思で超過勤務をしていたとしても、使用者には安全配慮義務があります。そういった勤務にならないような配慮なり、チェックは最低限果たす必要はあります。上司は目に見える労働時間時間という数字だけではなく、実際の勤務がどういう現状であるのかを把握して部下をコントロールしなければ、また同じような悲劇が繰り返されます。
2つ目、もしかして裁判が終わったことがその理由の一つなのか、事実上の未払い残業代23億円を社員に支払うとしたこと。2015年4月から2017年3月までの2年間について、勤務表に入力されている時間と自己申告の差分を調査してその金額を決定したようです。これが勤務時間に換算すると一人当たりどれくらいになるのか、むしろそちらが重要なのですが、それを公にすることはないのでしょうね。
失われた命や健康はいくら後でお金をもらっても戻ってきません。使用者や現場の管理者は、会社の利益だけでなく、労働者、部下の安全にも十分配慮すべきです。
※写真は京都駅ビル(京都市下京区)
2017年11月29日 05:56