副業・兼業の実現には多くのハードルがあります
まだ多くの企業では、就業規則等において原則としては副業や兼業を禁止しています。禁止とするその理由が、おそらく今後兼業や副業を認める時のまさに課題となるべくポイントではないでしょうか。大きく分けると次のようなことが考えられます。
【1】副業・兼業の線引きをどこにするのか
実際、会社や同僚にはオープンにはしていないものの、副業に似たことをしている人は結構いるのではないでしょうか。例えば、株の売買や、FX取引等です。ただし、あくまでも自宅であったり、休憩時間中にこっそり確認したり、売買の指示や注文の予約を入れたりといったことで、本業とは明確に切り離しています。しかし、もしこれらも副業として認めと、その時間や場所を明確にする必要があります。パソコンに向かって本業をしていると思ったら、FX取引をしていたということになりかねません。
【2】勤務時間の自主管理
本業の勤務時間と副業・兼業の勤務時間を纏めて労働時間とする場合、今の労働基準法の規程をそのまま適用することは不可能です。もし本業と副業それぞれで、現行の労働基準法で定める労働時間(1日8時間)を適用すると、極論ですが16時間勤務ということもあり得ます。また、本業は通常の勤務で、副業は土・日とすると毎週1日の休日付与という原則から外れることになります。企業で、どうやって労働時間や休日の管理をするのか、あるいは本人に任せるのか、難しい問題です。
【3】企業機密の漏えい
特別なスキルや、付加価値の高い情報を有する人が、もし副業先にその情報を洩らしたり、あるいはそのスキルや情報を使って本業先に背任となる行為をしたり、逆に副業先を悪用して大きな利益を得たりすることが考えられます。本人にその意図がなくても、結果としてそうなる可能性もあります。類似する業種への副業を禁止する、あるいは本業の企業では副業先を確認する、またその逆も同様の対応が必要かもしれません。それでも、複雑化した今の時代に、完全にチェックすることは難しいかもしれませんね。
【4】業務中の事故(労災時)の補償
もし、本業・副業どちらかで業務中の事故が発生した場合、労災は勤務していた事業所側で適用となりますが、片方では労働力に欠員が生じたり、もしかすると業務に大きな支障が出る可能性があります。その事故が事業主の故意や過失で発生した場合、一方の事業主は「ああそうですか、仕方がないですね」で済ませることができるでしょうか。
労働力が不足し、政府も「働き方改革」として、副業・兼業を容認・促進する意見がでています。ただ、こういった問題をクリアしておかないと、大きなしっぺ返しとなる可能性があることを認識しておかなければいけませんね
※写真は達磨寺境内にて(京都市上京区)
2017年12月02日 09:39