倒産したときのセーフティーネットについて
その名も「未払い賃金の立替払制度」といい、独立行政法人の労働者健康安全機構が主体となって行っている事業です。この独立行政法人は平成28年にもともとあった2つの法人を統合してできた、比較的新しい法人で、主な業務は労災病院の運営や、労災の予防、診断、再発防止の研究など、その名の通り、労働者の健康及び安全の確保がその目的です。その一つが、この未払賃金の立替払いということです。
ということで、まずこの制度の適用を受けることができるのは、労災保険の適用事業で1年以上事業を行っていた事業主に雇用されていたことが第1の条件となります。労災保険は、国家公務員や、農林水産業の一部を除いてはすべての事業に適用されるため、多くの人はその適用を受けることができます。第2の条件としては、退職の時期、企業が裁判所に破産の申し立てをした日、もしくは労働基準監督への倒産の申請をした日から遡って6ヶ月前から2年以内に退職した場合です。ただし、倒産をしたからすぐ支払ってもらえるという訳ではなく、再開できる見込みがない、債務超過で支払い余力がない等の認定を受ける必要があります。
第1の条件である、会社が労災保険に加入しているかどうかはここから確認できます。
☞「労働保険適用事業場検索」
対象となる「賃金」の範囲は、一般的にいうところの「給与」と「退職金」で、「賞与」は含まれません。賞与は多くの企業では半年とか1年といった期間の業績を基に評価し、支給されるもの。支払基準も明確でないこともその理由なんでしょう。では、いくらまで立替払い払いされるかについては以下の通りです。
退職日の年齢 | 未払賃金の限度額 | 立替払の上限額 |
---|---|---|
45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万年 | 176万円 |
30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
立替払される金額は未払賃金の8割まで、それぞれの年齢に応じた未払賃金の上限を超えれば、最高でも立替払の上限額までしか支払われません。
では、どれくらいの人がこの制度を利用して立替払いを受けたか、平成28年度の数字ですが、対象企業が2,029社、支給者数が21,941人、立替払額は約84億円、一人平均で約38万2,800円となっています。
最後に、対象となる事業主は、法人でも個人でも請求の対象となり、また労働者の国籍も問われません。万が一にも倒産となった場合の一つのセーフティネットとして知っておいても損はしませんよ。
※写真は祇園新地の甲部歌舞練場(京都市東山区)
2018年03月20日 17:58