「知らなかった」から始まった挙句の果てのできごと
日本年金機構がデータ入力を委託した企業の杜撰な入力ミスによって、年金の過小支払が問題となったのが今年の3月。当ブログでも2度ほど取り上げましたが、この委託業者が解散しました。日本年金機構はこの業者に対して約2億円の損害賠償請求をしていますが、どの程度賠償されるかは未定とのことです。
年金という社会的影響の大きい業務の委託を受け、その結果大きな瑕疵があった訳ですから、相応の責任を取ることは当然です。今回の場合、あまりに影響が大きく、また賠償請求額の大きさも解散することとなった一因と報じられています。
解散の原因を作った社長をはじめとする経営陣は、言葉は悪いですが自業自得。ただ、80人近くいたという社員にとってはなんともやり場のない思いではないでしょうか。IT業界には実に多様な仕事があります。その中で、日本年金機構からの委託業務という公共性の高い、社会的貢献度の高い仕事ができるというのは、社員にとっては少なからず誇りしていたのではないかと思います。それが一転して最悪の評価を受けて解散という事態に追い込まれたわけです。社員が負ったさまざまな傷を、最高責任者である社長はどのように考えているんでしょうか。
社員にとっては、経済的な負担も避けて通れません。会社が倒産した場合、労働者に支払われるべき賃金等の労働債権は、一定の範囲で他の債権よりも優先順位が与えられています。ただし、この会社に残された資産にもよりますが、賃金の支払いが遅れたり、一部がカットされる可能性もあります。
「再委託が解約違反とは知らなかった」から端を発した挙句の果てが、会社の解散という社会からの淘汰。社員のことを思うと、経営者の判断の重さを改めて考えさせられる出来事です。
2018年06月08日 13:57