増える「未払い残業代請求」、そのすべてが残業代でしょうか
残業代請求、本来もらえるはずの未払いの残業代について、在職中あるいは退職後に行われるケースが増えています。その理由には、常態化している長時間労働や深夜労働のウラにある未払い賃金を勝ち取ることが、近年大幅に増えた弁護士の新しい活躍の場として注目されている等と言われています。実際、電車の吊り広告や法律事務所のホームページにも、「残業代請求相談」などという文字を多く見るようになりました。
残業代の不払いはいうまでもなく、明らかに違法です。この点について私もまったく意義はありません。労働者としては提供した労働力に対する対価として賃金を受けるのは当然のこと。残業代の支払いは法律で規定されており、労使協定による固定時間外制度や裁量労働制といった一部の例外を除けば、1日8時間・1週間40時間を超えた時間は厳密に言えば1分でも時間外手当の支給対象です。
とはいえ、実際にすべての時間が残業手当の対象となるかといえばどうでしょう。以前にもブログで取り上げましたが、喫煙者がタバコ休憩として席を離れる時間、休憩コーナーで休む時間、集中力が切れて仕事中に少しぼんやり休む時間など誰でもあります。こういった時間の積み重ねとその日の残業時間、そこには「暗黙の了解」があって然るべきかと思います。長年一般企業にいた者として思うのは、残業代を全額支払っている企業、全額支払われている労働者がどれほどいるでしょうか。
また、明らかに残業代を得るために不必要な残業をする人もいます。会社によっては残業には事前申請を必要として、こういった「生活残業」を認めないようにしているところもありますが、すべてがそうとは限りません。そういった何の成果も生み出していない時間に対して、残業代を支給することは事業主の立場からすれば、「ちょっと待った」と言いたくなります。
既に生じている、明らかに故意で悪質な未払いは別として、今後こういった問題が起きないための手段として、私が顧問先にお伝えしていること。
➀出勤簿を必ず記載し、残業時間を会社として正しく把握すること
②残業は申請によるものとし、その理由と成果を残しておくこと
③固定時間外を導入していても、定めている時間を超過したら残業代を支払うこと
を徹底していただいています。
2018年07月27日 10:13