あくまでも選択肢の一つであってほしいのですが
昨日の朝日新聞朝刊1面記事の見出し
「年金開始70歳超も可能に」「首相 制度改正3年で」
3年以内ということは、安倍首相は次の首相としての任期内に改正を実現させることを考えてるのでしょうか。いよいよ年金も70歳以降の受給開始が具体化してくるようです。今のこの国の年金制度は、自分が若い頃に積み立てたお金を高齢者になってから受け取る「積立方式」ではなく、高齢者に支払われる年金を若い世代が負担する「賦課方式」。この制度では少子高齢化が進むほど立ち行かなくなってしまうことは今更言うまでもないこと、支給開始年齢だけで解決できる問題でもないのですが、総裁選のプロパガンダの一端もあるのかもしれません。
現在の年金の支給開始年齢は原則として65歳からですが、前後5年間1ヶ月単位で早く受け取る「繰上げ」と、遅く受け取る「繰下げ」を選択することができます。ただし、繰上げの時は1ヶ月0.5%減額、繰上げの時は1ヶ月0.7%増額されるため、仮に60歳から受け取る場合には30%減額、70歳から受け取る場合には42%増額した年金を受け取ることができます。今回の安倍首相の考えはこの繰下げの年齢を70歳超まで広げようとするものなのでしょうが、現実的に選択する人がどれほどいるのかが疑問です。
実際、平成28年の割合では、繰上げが34%、65歳からが64.5%、繰下げが1.5%となっており、ほとんどの人が60~65歳から受給開始を選択しています。健康状態やそのときの家計や家族の状況によって選択されるのでしょうが、今の平均寿命を考えると、繰下げより繰上げの方がメリットがあることは確か。「増額されても繰下げてまでは」ということもあるようです。少し余談になりますが、仮に老齢年金を繰り上げて60歳から受給してしまうと、その後障害状態となったときに老齢年金よりも手厚くなる障害年金を受け取ることができなくなります。60歳~65歳までは健康状態と相談しながら選択というのが、FPとしてはおススメです。
「70歳超開始」が今後議論されるのでしょうが、少し気掛かりなことは支給開始年齢が引き上げられていくこと。今の繰上げ繰下げの年齢全体がスライドして、例えば68歳年金開始で63歳から繰上げ・73歳まで繰下げということにならないかという点です。もちろん制度を維持するための改正は必要ですが、それまで高齢者もしっかり仕事ができて、収入を得ることができる仕組みが必要です。そのあたりも含めて、もし仮に安倍首相がこの先3年間も続投ということであれば、考えていただきたいものです。