IT業界ではまだまだ氷山の一角かも
先日の厚生労働省のプレスに気になる記事が掲載されていました。
「システム開発事業者へ「二重派遣」を行っていた派遣元事業主2社に対する行政処分について」
私自身が以前にIT業界の中にいたということで、この業界のニュースには多かれ少なかれ関心はあるのですが、さらに気になるのは二重派遣について行政処分がされたということです。二重派遣は法律で禁止されており、違法な就業形態となります。二重派遣とは簡単に言えば、A社の社員である太郎さんがB社に派遣され、さらにB社からC社に派遣されるといったケース。この場合はその名の通り、派遣がA社→B社、B社→C社と行われているため分かり易く明らかです。しかし、実態として今もなお多くのシステム開発現場で行われている問題が、A社→B社は派遣、B社→C社は請負となっている場合に起きるある問題です。
IT業界で請負という契約はごく一般的に結ばれる契約です。これは、客先常駐として客先でなければ開発環境や作業環境が無いという場合に結ばれ、客先でなければ仕事にならないため客先で仕事をするといった契約形態となります。そしてこのときにポイントになるのが、業務に関する指示系統。請負において提供するものはあくまでも成果物であって労働力ではありません。先ほどのB社→C社の請負契約では、請負元となるC社の社員はC社に客先常通しているB社の社員に対して、仕事に関する指示を直接することはできません。もし指示をしたいということがあれば、B会社に連絡し、連絡を受けたB社が客先常通している現場の管理者に指示を出し、管理者が各作業者に指示を出すといった手順が必要です。でも実際にこの手順を守っている開発現場は、私の経験上ではレアなケースではないかと思います。
派遣がA社→B社、B社→C社と行われている場合だけでなく、上記のようにA社→B社は派遣、B社→C社は請負でC社が業務指示を出している場合でも違法となります。この場合は二重派遣と偽装請負のダブル違法とも言えます。二重派遣でなくとも、業務請負として客先入場をし、客先の社員の指示を受けて作業をすることが公然と行われているのが実態です。今回の大阪労働局の対応は、まだまだ氷山の一角といえるかもしれません。
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