健康保険の扶養になれる人の条件
ここ1週間の話題で、健康保険の被扶養者の条件に「日本居住」を原則とすることを検討するというものがありました。そもそも扶養にできる条件とはどうなっているのでしょうか。
市町村が運営主体となり、自営業の人の多くが加入する国民健康保険には扶養の考えた方がありません。自営業者の世帯内での加入者の年収合計、加入人数をもとに保険料が算出されます。世帯年収にかかる所得割、加入人数にかかる均等割などが算定の条件となり保険証が発行され、一般に世帯年収が高いほど、また、加入人数が多いほど保険料が高くなる仕組みとなっています。
一方で会社員や公務員の多くが加入する協会けんぽや組合健保には、一定の条件に該当すれば被扶養者となり、加入者一人分の保険料で、被扶養者にも保険証がもらえます。被扶養者となる人の人数によって保険料が変わることはなく、あくまでも加入者の所得のみで算定される仕組みです。国民健康保険都の違いは明らかで、被扶養者に該当すれば、協会けんぽや組合健保は大きなメリットがあります。
では、その被扶養者となれる一定の条件(範囲)とは、
➀被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、子、孫及び弟妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの
②被保険者の3親等内の親族で➀以外のもので、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの
③被保険者の配偶者で事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの
④③の配偶者の死亡後におけるその父母及び子であって、引き続きその被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの
となっています。このうち、今回の見直しのきっかけとなったのは、①と②~④の違いにあります。➀には「その被保険者と同一の世帯に属し」という条件がありません。つまり、被保険者(=加入者)の配偶者や子、孫、弟妹については生計維持関係があれば、どこに住んでいても被扶養者として保険証が発行してもらえるということになります。
ここで問題になるのは、外国人労働者が健康保険の加入者である場合の➀の該当する被扶養者です。海外に居住していても被扶養者として保険証が交付されているため、日本に来て治療を受ければ3割負担で済みます。また、自国で治療を受けた場合であってもいったん自己負担として全額を支払い、あとで「海外療養費」として請求することで実質3割負担で治療を受けられます。自国で治療を受けても、日本からみれば「海外療養費」としての適用を受けることができる仕組みです。今後外国人労働者が増えることで、日本の健康保険の財政負担が増えることが懸念されるため、被扶養者の条件に「日本国内に居住すること」を条件に加えようとしているのです。
ただし、海外に留学している子どもや、家族全員で海外赴任する場合などは例外とすることが検討されているようですが、もし同じ保険料を払っているにもかかわらず、国籍によって違いが生じるというのは問題があるように思います。保険料に国籍の違いがないのに、いざ給付となったときには制限されるとなると、公平性を欠きます。
さてこの問題はどのようにクリアされるのでしょうね。
☞海外療養費に関する過去のブログはこちら~「海外で病気やケガをしたら健康保険証は使える?」