残業手当の計算の基礎となる「平均賃金」とは
サラリーパーソンの人々が時間外労働をしたり、深夜労働や休日出勤をした場合に支払われる「残業手当」。ではその計算の基礎となっているのはいくらか、みなさんは知っていますか。
まず残業をした場合の賃金の計算式、簡単に書き表すとすれば次のような計算式となります。
残業代=➀残業時間×②割増率×③1時間あたりの平均賃金
まず余談として、➀の残業時間というのは、原則として1日8時間または1週間40時間を超えて働いた時間が該当します。また、午後10時から午前5時に働いた場合には「深夜労働」、会社が就業規則等で定める法定休日(多くの企業では日曜日)に働いた場合には休日労働として残業代が支払われる対象となります。
次に②の割増率。残業や深夜労働・休日労働をした場合、事業主は通常の賃金ではなく、一定額をプラスした賃金を支払わなければなりません。その最低のプラス分である割増率は法律で定められていて、時間外と深夜労働は2割5分、休日は3割5分以上の割増率となっています。また時間外と深夜が重なれば5割、休日と深夜が重なれば6割以上となります。休日はすべて時間外とみなされるため、休日と時間外が重なることはありません。
そしてもっとも重要な③1時間あたりの平均賃金。いくらが計算の基礎になっているかは重要です。この平均賃金は給与を1ヶ月あたりの所定労働時間で割った金額がベースとなりますが、毎月毎月平均賃金を計算するのはいささか不便です。というのも月によって土日や祝祭日の日数は異なり、労働日数は変わります。よって、多くの場合には毎年労使協定などで定める実労働日数から年間の総労働時間を求め、これを12で割った平均月労働時間と賃金から、1時間あたりの平均賃金を設定します。また、平均賃金を求める際の基本となる賃金についても労働者個々の事情によって差が出ないよう、次のような名目で支払われている賃金は除外されます。
❶家族手当(扶養手当)
❷通勤手当
❸別居手当(赴任手当)
❹子女教育手当
❺住宅手当
❻臨時に支払われた賃金
❼1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与・皆勤手当てなど)
上記以外で例えば、資格手当や長期勤務手当、あるいは定額時間手当などを支給している場合、これらは時間外手当を計算する際の平均賃金には含まれるため注意が必要です。私が以前勤務していた会社では、ある手当が時間外手当の基礎となる賃金に含む含まないの解釈に相違があるとの労働基準監督署からの指摘を受け、過去2年にさかのぼり残業手当を支給したことがありました。会社によっていろいろな名目の手当があります。「これってどうなるのかなぁ」と判断が難しい場合には、労働基準監督署に相談してみるといいでしょう。
企業の給与担当者の方、くれぐれもお間違えのないように。