印象に残っている昔話から
私は前職でシステムエンジニアをしていました。今日はそのときに実際にあった昔話からです。
企業や職場にコンピュータを置き、システムを導入する目的の一つが人の仕事の置き換え。人が多くの時間を掛けてする煩雑な事務処理をシステム化することで、時間だけでなく人的資源を節約し、その節約された時間や労力を新たな仕事に向けたり、あるいはより創造的な仕事に貴重なコストを投下することができるようになります。その仕組みを考えることがシステムエンジニアの仕事の一つでもあります。
昔、ある地方公共団体のシステム開発に携わったときのことです。当時職員がしていた業務を全面的にシステム化する案件であったため、どういった業務があり、どういった書類を作成しているか、またそれをシステム化することで何がどう変わるのかといったことを定期的に打ち合わせ(レビュー)を繰り返していました。そのレビューの会話の中で職員から出た言葉が、いまでも印象的に残っています。
私 :「システム化によって〇〇と▲▲は自動的に作成されることになります」
職員:「この帳票をシステムで自動的に作成するのはやめてください」
私 :「なぜでしょうか、大きく事務量が削減できるのですが」
職員:「この帳票がなくなると、担当者の仕事がなくなってしまいます。組合との調整が必要です」
私 :「・・・・」
今の公務員の方々の考え方は分かりませんが、当時はこういった考え方が多かったのかもしれません。また組合の力も大きく、組合員である職員の仕事はちゃんと守るんだということだったんでしょうね。
最近話題になった例の統計問題もこれに近い考え方が根底にあるように思えます。自分の仕事は誰にも譲らない、自分の手元に置いておく、そのためには多少の間違いはあってもそれを認めて、あるいは事後に訂正するようなことはできない。また属人化するためにその過程は表に出さない、といったことの積み重ね、繰り返しが起こした事態ではないかと思えるのですがいかがでしょうか。
結局先の帳票はシステム化されることはありませんでした。せっかくシステムを導入するにもかかわらずです。皆さんの仕事の中でもこういったことありませんか。「これは私の仕事です」といって属人化し、誰にも引き継げない仕事。実はこれがトラブルの元であり、また意外にシステムに置き換え易い仕事であったりするのですが。