相続で新しい制度が始まりました
その制度とは、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」といわれるもの。今までは、被相続人が亡くなった場合、その被相続人名義の口座が遺産分割の対象となった場合、その分割が終了するまでは、相続人単独ではその口座から預金を引き出すことはできませんでした。そのため、残された遺族が当面の生活費や、あるいは葬儀に必要な費用を準備できなかったりといった問題がありました。
今回の制度は、ひとことで言ってしまえば相続預金の一定額までの引き出しを認めますというもの。設けられた制度には次の2つがあります。
①家庭裁判所の判断により払戻しができる制度
②家庭裁判所の判断を経ずに払戻ができる制度
ですが、①については家庭裁判所に遺産の分割の審判や調停が申し立てられている場合に、裁判所が認めた一定額まで払戻ができるというので、少し訳アリの状況下での制度とも言えます。身近で利用しやすい制度としては②の方で、こちらは相続預金のうち、口座ごとに次の計算式で求められる額については、家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から単独で払戻しを受けることができます。
預金額✖1/3✖払戻しを行う法定相続人の相続割合
例えば、全銀協のホームページに掲載されている事例を引用すれば、相続人が長女、二女のふたりで、相続開始時の預金額が1口座の普通預金600万円であった場合、長女が単独で払戻しができる額=600万円×1/3×1/2=100万円となります。ちなみに、同一の金融機関から払戻しを受けることができる金額は150万円が上限となっています。
制度利用には、一定の書類が必要であり、払戻しまでには時間も必要とのことで、金融機関の窓口ですぐに引き出せるということではありませんので注意が必要です。やはりもしもの時に困らないように備えるのであれば、自分名義の口座に常に一定額の預金を準備しておくのがおススメです。
2019年07月03日 12:23