内定者研修中にケガをしたら
一般に労働者が業務中や通勤途中にけがをした場合、あるいは業務に起因して病気になった場合には労災(労働者災害補償保険)の適用を受け、補償を受けることができます。業務外の事由による負傷・疾病のときに使うことができる健康保険が原則3割負担であるのに対し、労災保険は自己負担がありません。また、保険料についても労働者が負担することはなく、全額事業主が負担しています。そのためか労災保険という保険があることを知らない人が少なからずいて、時折「労災ってなんですか」という質問を受けることがあります。
さて労災法の第1条には「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びそ
の遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする」と書かれています。対象となるのはあくまでも労働者であることが前提です。
前置きが長くなりましたが、入社前研修を受けている内定者がこの労働者に該当するかという点が論点となります。その研修の形態や賃金の支払いの有無などにもよりますが、単に研修を受けるという目的だけである場合には労働者とは認められず、労災保険の適用を受けることはないというのが前例です。ただし、その理由が企業の安全配慮義務に欠けていたなど、企業側に責任がある場合には、企業から内定者への損害賠償といった問題が生じてくる可能性があります。
内定者研修を実施する場合、企業としては事故が発生しないように配慮するとともに、万が一のリスクに備えるなら損害保険などの備えをしておくのがベストな対策ではないでしょうか。
2019年07月09日 07:06