よく事業主さんから受ける相談、つい最近もありましたこんな相談。
「ある従業員から、有休休暇の取得申請が頻繁にある。普段の仕事の成果や取り組み方をみると正直与えたくないのだが」
事業主さんの心情からすれば、理解できないこともありません。キチンと仕事をして評価の高い社員とそうでない社員がいて、同時に有給の取得申請があったら、気持ちよく承認できるのはどちらか、言わずもがなです。でも法律的には事業主さんは従業員からの申請を原則として拒否することはできません。労働基準法第39条には「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」と定められており、取得の理由にかかわらず、付与しなければならないとされています。
とはいえ、この第39条には次のような但し書きがあります。「ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」。しかし、この但し書きの適用は非常に限定的で、ただ単に忙しいというだけではなく、同時に複数人が請求した場合や、他の人では代替えできないといった場合に限られます。でも忙しい時に他の社員が頑張っているのに、何を気にすることもなく有給休暇を申請するのは、職場の協調性を乱すことになります。これも問題があります。
では、有給休暇野の取得について何の制限もできないのか? ということですが、次の2点については制限をすることは問題はないと考えられます。
【1】人事評価において「仕事の量と質」を評価する
労働基準法では、「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」(第136条)と定めていますので、有給休暇を取得した日数に応じて給与や賞与を減額するというようなことはできません。ただし、有給休暇を取得した結果として、当初要求されていた仕事量ができなかったり、あるいは仕事の質が落ちたという面を評価して、人事評価に反映することは可能です。言い換えれば、有給休暇を取得したという直接的なマイナス評価はできませんが、その結果という間接的なマイナス評価はできるということです。
【2】事後の申請は拒否できる
有給休暇は事前申請が原則です。企業によっては病欠などについては事後に労働者が申請することで、給与の欠勤控除を避けるという配慮から有給休暇に振り替えているところがほとんどです。が、これを逆手による人がいることも事実。体調不良などの理由をつけて休み、事後に有給休暇に振り替えることで取得するということを繰り返す人がいます。明らかに繰り返し行う場合、会社はこれを拒否する、あるいはなんらかの証拠の提出(例えば診断書など)を求めるなど、抑止策をとることは可能です。
有給休暇は労働者の権利ではありますが、逆に労働契約で労働力を提供する義務を負っていることも確かです。使用者と労働者で「権利と義務のどちらが先か」ということはありますが、そこはそれぞれの裁量で行動するべきもの。「制限」などいったことが必要にならないことが一番ですよね。
2018年09月22日 11:04