昨日に続き、通勤に関する話題です。
今日は、通勤中の事故についてです。企業に勤めている会社員の方は、労働保険の一つである労災保険(労働者災害補償保険)の適用を受けています。この保険の保険料は全額を事業主が負担しており、法律の中では他の社会保険のように「被保険者」といわず、「適用労働者」と定義されています。
労災保険では、労働者の業務上の怪我や病気だけでなく、通勤途中の事故についても保険が適用されます。が、通勤途中であればすべてが補償されるわけではないのです。では、どこまでが保険の給付対象となる通勤に該当し、あるいは該当しなくなるのでしょうか。いくつか具体例をご紹介します。
➀普段通勤に使う交通機関の事故のため、他の交通機関を利用したり、通勤経路を迂回、あるいはタクシー等を利用したとき
通勤定期券に表示された経路や会社に届け出ている経路に対して、迂回した経路が一般的に考えられるルートであり、利用する手段が妥当であれば「通勤」と認められます。
②帰宅途中に治療のために医療機関に立ち寄り、治療後にいつもの経路で帰宅したとき
治療のために病院に立ち寄った場合、病院にいる間は適用されませんが、その後は再び通勤とみなされます。
他にも、選挙権の行使(投票所に行った)や日用品の購入のため店に入った、あるいは親の介護等のために施設や実家に立ち寄った後の帰宅の場合も該当します。
③単身赴任で週末に赴任先に借りているアパートから自宅に帰る、或いはアパートに戻る(アパート→自宅→アパート)とき
就業場所である会社との往復ではありませんが、就業した日もしくは翌日の移動、就業をする前日もしくは当日の移動については通勤とみなされます。例えば月~金曜日まで就業日の場合で、金曜日または土曜日にアパートから自宅に帰る、日曜日または月曜日に自宅からアパートに移動するといったケースです。なお、前々日以前・翌々日以降の移動も交通事情などで認められるケースがあります。
④業務終了後、社内で開かれた慰労会や歓送迎会に参加してから帰宅したとき
行政通達により、「おおむね2時間未満」については就業と関連したものとみなして、その後の帰宅については「通勤」とみなされます。
⑤会社の帰りに同僚と居酒屋で酒を飲んだあと、いつも通りの経路で帰宅したとき
通勤の途中に就業又は通勤とは関係のない目的で経路を外れた場合、②に記載するケースを除き、仮に通勤経路に戻っても通勤とはみなされません。ただし、これも行政通達があって、「ごく短時間」であればよいとされています。
⑥休みの日に私的な事由で会社に出勤したとき
私的な事由であって業務との関連がない場合には通勤とはみなされません。
いくつか事例をあげましたが、実際に通勤と認められるかどうかはいろいろな要素が考慮されるため、上記のケースでも必ずしも記載の通りにならない場合もあります。
通勤途中は寄り道せず、定期券どおりのルートで出勤・帰宅していれば何かの時には補償されるということです。
※写真は「手作り香袋 いせき」にて(京都市北区)
2017年05月17日 07:16