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ブログ(日々雑感)

「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の記載方法の動画がアップされました

釘抜地蔵尊(20171211)
12月7日、日本年金機構のお知らせにある動画がアップされました。

その動画とは、「平成30年公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の記載方法についてです。扶養親族等申告書は、サラリーパーソンの方は毎年年末にその年の生命保険料等の控除申告書と併せて、翌年分を会社に提出していますが、この年金受給者版に相当するものです。公的年金の受給者に対しては毎年9月~10月にかけて日本年金機構から送付されていますが、今年は記入内容が増えたこと等により8月末から送付されていました。
☞「扶養親族等申告書」のサンプルはこちら(日本年金機構ホームページより)

そこに記入しなければならない項目で、今までと大きく変わったのが、「④配偶者の区分」。配偶者控除もしくは配偶者が障害者控除の対象となる場合、条件によって「1」「2」「3」を選択して〇を付けなければならないのですが、提出されたものに記入漏れや重複記入があり、また問い合わせも多いことから記載方法を説明した動画がアップされたようです。

来年から配偶者控除の上限が150万円に引き上げられること、その対象が本人の所得によって決まるため、その条件の組み合わせで1~3のどれになるかが決まるのですが、よくある「合計所得金額」の考え方もあり、誤解されやすい、分かり難い点はあるようです。1~3に該当するケースを改めて記載すると、

【1に該当するケース】
本人(年金受給者)の合計所得が900万円以下で配偶者の合計所得が38万円以下
➡配偶者控除(年間38万円)と障害者控除(年間27万円~75万円)を受けられる
※障害者控除は配偶者が所定の障害状態にある場合が前提です
【2に該当するケース】
本人(年金受給者)の合計所得が900万円以下で配偶者の合計所得が38万円以上85万円以下
➡配偶者控除(年間38万円)を受けられる
※障害者控除は配偶者の合計所得が38万円を超えるため受けられない
【3に該当するケース】
本人(年金受給者)の合計所得が900万円超で配偶者の合計所得が38万円以下
➡障害者控除(年間27万円~75万円)を受けられる
※配偶者控除は本人の合計所得が900万を超えるため受けられない
※障害者控除は配偶者が所定の障害状態にある場合が前提です

となります。また「所得」とは、収入からその収入を得るために必要な経費を除いた金額のことをいいます。例えば収入が給与であれば、給与所得控除(最低65万円)を引いた金額が「所得」となります。また合計所得金額とは、配当所得や利子所得等のすべての所得を合計したものです(損益通算後、繰越控除前の所得ですが詳細はここでは割愛します)。

記入に不備があった場合、日本年金機構から返送され、再提出が必要になっています。今までと異なるため、特に高齢の方は細かい数字や条件を確認しながら、正しく選択することは難しかったのかもしれません。

ところで、マイナンバーの活用によって、平成31年以降は配偶者の有無や本人・配偶者の所得把握ができればこの手続きは不要になると思うのですが、どうなるのでしょうか? また調べてここでお知らせできればと思います。

☞「平成30年分公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の記入方法の動画について(日本年金機構ホームページより)はこちら

※写真は釘抜地蔵尊にて(京都市上京区)

2017年12月11日 05:46

ちはやぶる神代もきかず龍田川 からくれなゐに水くくるとは

栄摂院(20171210)
市内の紅葉、名所と言われる寺院、鴨川べり、近所の木々もほぼ終わり、すっかり落葉してしまいました。モミジの名所は以前の静けさを取り戻しています。

春の桜は、冬が終わり自然に色が少ない中で桜一色という美しさ。これと比べて秋の紅葉は、モミジだけでなく、イチョウやケヤキなど、赤・黄・緑・橙など、木によって、場所によっていろいろな組み合わせで、色を感じることができるというところが魅力なんでしょうか。

同じ場所であっても、時間帯によってそのグラデーションが変わります。寺院では、建物や壁の色と組み合わさることによる効果もあるのかもしれません。 以前に聞いた専門家のコメントですが、日本の紅葉は世界でも類を見ない魅力があるそうです。四季がはっきりしているという気候条件の上に、落葉樹の種類が多いこと、またそれをうまく生活空間に中に取り込んで、共存していること。桜も紅葉も日本人の価値観にどこか共通するところがあるんでしょうね。「見事なほど咲いて、赤くなって、あっという間に散っていく」、平家物語に描かれている栄枯盛衰に重なる部分、ありますよね。

桜と紅葉が古の世からいかに日本人の心をとらえているか、それは百人一首にうたわれている句の数の多さでもよく知られたことです。桜と紅葉、奇しくもそれぞれ6句づつ、梅と菊がそれぞれ1句つづであることと比べればその違いは明らかです。選者の藤原定家の好みもあったのかもしれませんが、それだけではないのではと思います。

個人的に百人一首は好きでよく読みます。特に風景を描写している句は、あるときに参考になるのですが、わかります? それは趣味にしている「写真」です。あくまでも個人的な意見ですが、百人一首に読まれている景色をイメージすると、その切り取られている素材に驚くような句がたくさんあります。ちなみに紅葉の6句でもっとも好きな一句は、

「ちはやぶる神代もきかず龍田川 からくれなゐに水くくるとは」(在原業平)

落葉が水面に浮かんでいる光景がベースになっていますが、落ちてもなお圧倒的な赤をイメージさせますよね。私の写真、そうなっていますでしょうか?

※写真は栄摂院境内にて(京都市左京区)

2017年12月10日 09:43

東京メトロのホームページはなかなかいい、でも一考すべきことも

神泉苑(20171209)
先日、東京の地下鉄の乗り換えを調べようと東京メトロのホームページを見た時のこと、「よくできてるな~」と思わず感心してしまいました。 そのポイントは「知りたい情報が取りやすい」こと、「見やすい」そして「遊び心」です。

☞東京メトロのホームページはこちら

【知りたい情報が取りやすい】
まずはトップ画面のバナーで、運行状況、路線や駅の情報、運賃・乗り換え案内といった、利用者がまず知りたいことが簡単に選択できるようになっています。そして次に知りたい路線を選択するということで、どの路線の何が知りたいかを容易に選べることです。そして、一つ驚いたのが「遅延証明書」を印刷できること。各路線の過去35日分の運行状況が6つの時間帯で分類されていて、おおむね5分以上の遅延が発生した時間帯をクリックすると、遅延証明書の印刷を選択できるようになっています。これは驚きです。延着証明書は駅員が改札を出たところで配布するのがよくある光景ですが、東京メトロではこういった光景はもうないんでしょうか。会社で画面を見せるか、印刷して提出すればいいんですから。メトロも余計な混雑を避けることができるので、一石二鳥とも言えますね。

【見やすい】
使用する色や文字が統一されているので、見ていて疲れません。使っている色は東京メトロのシンボルカラーの2色と、9路線のラインカラーが基本になっているので、すごく落ち着いた感があります。また、外国語対応もできています。英語・中国語・韓国語・フランス語はよくあるパターンですが、タイ語って珍しいですよね。

【遊び心】
画面の一番下、Copyrightの下を、アニメーションの地下鉄車両が走っていきます。何パターンあるのかはわかりませんが、少なくとも4つ、丸ノ内線、銀座線、千代田線、半蔵門線は確認できました。他にもあるのかしれまんが、ずっと待つわけにもいかず。もしよかったら見つけてください。

話は戻りますが、やはり遅延証明書には驚きました。ちょっと調べてみると、他に神戸市と福岡市の市営地下鉄でも、ホームページから遅延証明を照会できるようにはなっていますが、メトロ程細かく、かつ印刷することを前提にはしていません。そこでふと思い出したのが、最近ネットで見たニュース。

つくばエクスプレスで、電車を定刻より20秒早く発車させたことを謝罪したというもの。 日本では何かとまず「謝罪」することが基本になっていますが、メトロの遅延証明書発行を見ていると、その「謝罪」と「サービス」が結びついてしまっているように感じます。もちろん、公共交通機関として必要かもしれませんが、「謝罪」することがあまりに過剰になると、どんどんエスカレートしていくような気がしてなりません。

「そもそも10分、15分程度なら車内放送でもいい」と私は思うのですがいかがでしょうか。多少遅れることを織り込んで移動する、それ以上遅れたらそれはそれで仕方がない、と社会全体が思えるようになれば、ある意味で楽かもしれませんね。

※写真は神泉苑(京都市中京区)

2017年12月09日 08:36

NHKの受信料に関する判決から思うこと

安井金比羅さん界隈にて(20171208)
一昨日のNHK受信料についての最高裁判決、「受信料支払いは事実上の義務」について少し考えてみました。

新聞の記事では、受信料の徴収は現在外部委託、いわゆるアウトソーシングされていて徴収率は約80%、未払いの世帯は全国で1,000万世帯とのこと。未払いの理由、いろいろあるでしょう。今回の裁判の原告となった人の意見、あるいは経済的な理由、なんとなく払いたくないなど。とはいえ、一個人の意見としては、「何の面白みのない」、と言われるかもしれませんが、判決の内容と主旨は最もではないかなぁと思います。もし仮に、判決が「受信料は任意」となっていたら、80%の世帯からは「任意だったら払わない」という人が出てくることは明らかです。渋々納得して契約した人がいたら、「契約を解除して、過去にさかのぼって返還してほしい」ということも起きかねません。

受信料は、形こそ違いますが、ある意味では「テレビを持っている」ということに対する税金のようなものなんでしょね。だからといって「じゃ最初から国が税金として徴収してNHKに回せば」とはいきません。それをすれば、NHKが国の一機関となってしまいます。よってNHKは自力で費用を徴収するしかなく、その費用をテレビの恩恵を受けている人に広く、薄く負担してもらおうというのはやむを得ないのではということになります。

判決では、「表現の自由を支えるための費用」と言っています。我々が憲法で保障されている様々な権利を維持していくためには、それなりのコストを負わなければならない訳で、大多数の人がそれぞれ応分の負担をしています。「義務」と表現されると、少し仰々しいですが、「表現の自由」や「知る権利」を担保するためのコストと思うようにしてはどうでしょう。

ただ、ここでいう表現の自由は我々が行使する権利ではなく、NHKが国民の代弁者となって行使する権利です。そのコストを我々が払っている訳ですから、ちゃんとこの役目を果たしてもらわないと困ります。スポンサー収入で成り立っている新聞や雑誌、民送テレビ局では、報道の内容に少なからず偏りがあります。それはそれで容認されていますが、NHKはかの国の国営放送のようであっては意味がありません。

以前、時の政権に対して厳しいコメントが多かったニュースキャスターが、異動(降板?)したことで話題になったことがあります。定期的な異動であったと思いたいのですが、仮に噂であっても政治が介入することがないようにしてもらいたいですね。


2017年12月08日 05:59

賞与を支給したときの社会保険の手続きをお忘れなく

KAWA cafe(20171207)
12月は多くの企業で賞与(ボーナス)が支給されますが、皆さんの会社ではもう支給されましたか? 

賞与支給のとき、総務や経理担当者が忘れてはならないことがあります。 それは、「被保険者賞与支払届」と「被保険者賞与支払届総括表」を年金事務所あるいは健保組合に提出することです。原則として支払日から5日以内に提出しなければなりません。新規適用届等で予め賞与支払月を届け出てあれば、支払月の前月に被保険者名や生年月日をプレ印字した用紙が日本年金機構から送られてきますので、提出漏れは防げるかと思います。しかし、届出をしていない場合や、臨時に手当等を支給する場合には注意が必要です。

賞与支払届が必要な「賞与」とは、「労働の対象として支払われるもののうち、3カ月を超える期間ごとに支払われるもの」とされていて、名称は問われません。賞与、期末手当、決算手当等であっても括りは同じということです。就業規則等で、賞与支給月が6月と12月の年2回と定めており、この通り支払ったが、たまたま業績が良かったため、3月末に期末手当を支給した、といった場合ももちろん対象になるということです。

また、こんな景気のいい企業はそうそうないかもしれませんが、たまたまその年に限って、一時的に4回支給されたという場合にも、年3回の支給と同じように賞与とみなすことになっています。また、逆に業績が悪く賞与の支給がなかった場合であっても、「被保険者賞与支払届総括表」のみ、「④支給・不支給」の欄を「1:不支給」として提出しなければなりません。

賞与から控除する保険料は、給与の場合と料率は同じです。1,000円未満を切り捨て、これを「標準賞与額」といいますが、これに厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料それぞれの料率を乗じて求めます。ただし、健康保険料については年度で573万円、厚生年金保険料については1回150万円が標準賞与額の上限となっています。例えば、1回の支給額が200万円の場合、厚生年金保険料を計算する際の標準賞与は150万円となります。

厚生年金は平成15年4月以降の期間については標準賞与額も含めた報酬を元に年金額が計算されます。もし、賞与支払届が提出されないということになると、従業員の将来の年金額に影響を及ぼすことにもなります。担当者の方は事務手続きを忘れないようにしてください。

(日本年金機構ホームページより)
☞被保険者賞与支払届はこちら
☞被保険者賞与支払届総括表はこちら

※写真はKAWA cafeにて(京都市中京区)

2017年12月07日 05:42

今、全国の自治体が「強化月間」として取り組んでいます

甲子園浜(20171206)
全国の市町村では11月~12月の期間、「〇〇強化月間と」力を入れて取り組んでいることがあります。それは・・・

この記事を読んでいる多くの方にはおそらく無縁ではないかと思いますが、その名も「税金の滞納整理強化月間」、滞納されている市税の督促・徴収を強化しようというものです。今、「滞納整理強化月間」とキーワードを入力してネット検索をすると、多くの市町村が取り組んでいることが一目瞭然です。また宮城県のように、「宮城一斉滞納整理強化月間」として、県と市町村が連携して取り組んでいる自治体もあります。

対象となる税金は、市県民税・固定資産税・都市計画税・軽自動車税・国民健康保険税といった都道府県や市町村が課税権者として徴収する税金。これは、道路整備、上下水道といった社会インフラや、教育、保健・衛生、警察、消防などのさまざまな行政サービスの財源となるもの。滞納分を徴収することは、公平性の観点からも必要ですが、では「何故この時期なのか」という単純な疑問がふつふつと涌いてしまいました。 明確な理由となるかはわかりませんが、大阪市のホームページにこんな記載があります。
「大阪市では、12月が民間企業の賞与の支給や商慣習などにより、市税の納付につながりやすい環境にあることから、毎年12月を市税の滞納整理強化月間として、各市税事務所等において自主納税の推進と滞納整理に取り組んでいます」
(大阪市ホームページhttp://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000412884.htmlより一部抜粋)
確かにこの理由、一理ありますね。

この時期、滞納者のもとには、行政の担当者が電話連絡や直接訪問によって納税を催促したり、さらに給与や銀行預金・自動車・不動産の差し押さえにより、強制徴収となる可能性もあります。サラリーパーソンの場合、住民税は源泉徴収されていますが、軽自動車税や固定資産税は金融機関やコンビニで納付しているケースもあります。未納の場合、先ず督促状が届いているはずですが、ついうっかり他の郵便物に紛れて片隅に追いやってしまったものはないか、確認してみましょう。

ちなみに、総務省の資料によると、自動車や二輪車を差し押さえるとき、「タイヤロック」という装置を用い、利用できない状況にして督促を促すそうです。その結果、数日以内に納付もしくは納付を承諾する効果があるとのこと。平成27年度には、実際に37都道府県、244市町村で行われており、そういえば以前、差し押さえられている状態の車を見たことがあります。

ふと思ったのですが、11月~12月に実施される理由、賞与支給や商習慣というだけでなく、新年を迎えるにあたっての気持ちの面もあるのかもしれませんね。

※写真は甲子園浜にて(兵庫県西宮市)

2017年12月06日 05:37

労使協定の数字だけでは判断できません

六角堂(20171205)
朝日新聞の昨日の報道、「1部上場企業の主要225社のうち、5割超で残業上限が過労死ライン超え」

厚生労働省が過労死ラインとしている残業時間は、発症前2~6ヶ月平均で月80時間超、または直近1ヶ月で100時間超。今回の調査結果では、全体の7割を超える企業で1ヶ月80時間を超える協定時間を定めていたとのこと。100時間を超える企業も3割近くに上っています。

労働者に法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超える労働をさせる場合には、就業規則と異なり、仮に労働者が一人でも労使協定を締結して労働基準監督署に届け出る必要があります。いわゆる「36協定」と呼ばれるものですが、では「この届出をすれば上限はないのか」と言えば、そうではありません。この協定においても、一般の労働者の場合には、か月45時間・年間360時間という制限があります。しかし、ここには「特別条項」という規定があります。

「特別条項」とは、「あらかじめ特別の事情(臨時的なものに限る)が生じたときに限り」、限度時間を超えて労働させることができるというものです。別に「エスケープ条項」とも呼ばれていますが、 この規定を使うと、例えばあるゼネコンの労使協定「月150時間、年間1,170時間」ということも可能になります。特別条項の月の残業時間は年6回までという制限があるため、150時間×6回=900時間、残りの6か月間は月45時間として、45時間×6回=270時間、合計で1,170時間という具合です。特別条項の場合、限度時間を超える一定の時間の制限について、明確に定める基準がありません。よって、実質的には青天井とも言えます。今回の調査結果では、年間1,200時間という企業もあり、平均すれば毎月が過労死ラインと言えます。この36協定で定める時間、ここには法定休日に関する出勤時間は含まれていません。よって、休日勤務の時間を時間外労働に含めた場合、実際にはもっと長くなる可能性もあります。

一方で36協定は、業種特有の事情や、突発的な事故・トラブルに備えて、予め最大限で締結しているということもあります。そういった観点では、今回の調査結果が必ずしも実態ではないという面もあり、この時間だけで一概には判断はできないとも言えます。しかし過重労働の伏線であることも確かです。平成31年4月を目途に働き方改革の一環で、特例でも上限を「年間720時間」とする案が検討がされています。ただ、どんなに制限をかけても最も大事なことは、企業側の「安全配慮義務」の徹底ではないでしょうか。

※写真は六角堂(京都市中京区)

2017年12月05日 05:33

労災保険料の保険料率が引き下げられることになりそうです

京都御所にて(20171204)
来年度から労災保険料の保険料率が引き下げられることになりそうです。

企業や労働者が支払っている保険料と言えば、大きく分けると社会保険料と労働保険料の2つ。社会保険料は更に、厚生年金保険料と健康保険料、40歳以上のみが負担する介護保険料の3つに、労働保険料は雇用保険料と労災保険料の2つにそれぞれ分類されます。もっとも労災保険料は、全額を事業主が負担するため、「保険料が下がる」といっても、残念ながらサラリーパーソンの皆さんの給与明細に直接影響することはありません。

労働保険料は、一部の例外を除いて保険年度内(4月から翌年3月)に支払った賃金総額に対して雇用保険料率、労災保険料率を乗じて求められます。それぞれの保険料率は業種によって、雇用保険料率は3区分、労災保険料率は一般の事業では54の区分に分かれています。労災保険料率は、その業種毎の「事故の発生リスク」によって細分化され、例えば、金融・保険・出版といった業種では1000分の2.5、金属鉱業・石炭鉱業は1000分の88といった具合です。

料率がどの程度引き下げられるかは明示されていませんが、保険料総額では1,300億円減とのこと。ちなみに労災保険料の総額がどれくらいか想像できますか。平成27年度の数字にはなりますが、金融庁の労働保険特別会計の資料を見ると、収入が1兆1,269億円、支出が1兆615億円となっています。剰余金も相当あることから引き下げで制度自体にすぐ何か支障が出るということはなさそうです。

今年の4月には、もう一つの労働保険である雇用保険料率が引き下げられていますが、今回の労災保険料率の引き下げと併せて、合計3,000億円程度の企業負担が減ることになります。実はこれは一方の負担増と完全にバーターとなる金額です。選挙公約でもあり、アベノミクスの目玉政策の一つでもある「待機児童対策」の財源として政府が企業に負担を求めた金額が3,000億円、あまりに数字が合い過ぎて、少しひねくれた見方をすれば、初めから筋書があった「出来レース」にも見えてしまいます。

もちろん、企業や経営者の立場からすれば下がるに越したことはないのですが、一個人の意見として、労働保険料にも従業員数や利益に応じた「規模割」のような料率を設け、これで臨機応変に対応し、本来の料率は一時の政策の具として安易に左右されないようにしておくのが保険財政の安定にはよいのではと考えます。昨今、大手企業では内部留保で膨大な資金をプールしています。株主への配当や、設備投資といったことがその理由のようですが、大きな利益を上げている大企業に少々多めに負担をしてもらい、その分、中小企業の負担を軽減するというのはどうでしょうか。

※写真は京都御所にて(京都市上京区)

2017年12月04日 06:07

京都市の景観保全と文化の立ち位置とは

夕焼け(20171203)
古都京都の景観保全と、長い間に独自に培われた文化のバランスが問われています。

京都市では現在の市長、門川市長が就任した2008年以降、町の景観保全の取り組みを積極的に進めています。その目玉は、市内の建物の高さ制限の引き下げと屋外看板や点滅式・移動式の照明の撤去、四条通の歩道拡張(車線の減少)です。高さ制限では、今や市内ではマンションは5階建て(高さ15m以下)までしか建てることができません。また、以前は特に京都駅前、四条通や河原町通は、他の都市と同様にビルからはみ出すように看板が並び、電飾の点滅・移動式のいわゆる「ネオン看板」がありました。しかし、今これを見ることはありません。制限の範囲で設置できる広告物も、利用できる色や設置できる高さ、大きさまで決められています。その結果、住んでいるといつ間にかという感じですが、以下の資料を見るに、そのBefore Afterでは驚くほど変化しています。私は、個人的な意見として、今の市内の方が京都らしいなぁとこの点では評価しています。
☞京都市の資料「京のサイン」はこちら・・・四条通の変化をご覧ください(P5,6)

さて、この屋外広告物に関する規制が、今思わぬところで議論となっています。それは私の自宅のすぐ近く、京都大学に接する東大路通や東一条通で見慣れた風景、通称「タテカン」と呼ばれている、京都大学の学生が道路に接する石垣に立て掛けている看板です。看板の内容は、大学行事の周知であったり、クラブやサークルの勧誘などですが、京都大学の学風もあり一部には過激な、政治色の強い内容のものまであります。今これが、いわゆる「屋外広告物」に該当するとして、京都市が大学側に撤去を求めているということなのです。

京都大学では、立て看板を構内に移動することを検討しているとのことですが、このタテカンを「屋外広告物」として一律に条例の網を掛けるというのはどうなんでしょうか。企業やお店の広告は不特定多数を対象とする営利を目的としたもの、かたやタテカンは営利を目的としていません。表現の内容に多少の制限はあっても、一律撤去は強引に思います。

京都大学のタテカンもいわゆる「京都大学らしさ」であって、長年培われた文化のようなもの、なくなってしまうのは少し寂しい気がします。 景観保全も大切なことですが、そのために後からできた条例によって先のものをすべてを排除することは、今回のタテカンに限らず、少し危険な気がします。みなさんはどう思われますか?


2017年12月03日 08:19

副業・兼業の実現には多くのハードルがあります

達磨寺境内にて(20171202)
最近、副業に関する報道が増えてきました。実際に副業を容認している企業も出てきていますが、もし会社として容認するかどうかを判断するとき、どのような点について考えたらよいのでしょうか。

まだ多くの企業では、就業規則等において原則としては副業や兼業を禁止しています。禁止とするその理由が、おそらく今後兼業や副業を認める時のまさに課題となるべくポイントではないでしょうか。大きく分けると次のようなことが考えられます。

【1】副業・兼業の線引きをどこにするのか
実際、会社や同僚にはオープンにはしていないものの、副業に似たことをしている人は結構いるのではないでしょうか。例えば、株の売買や、FX取引等です。ただし、あくまでも自宅であったり、休憩時間中にこっそり確認したり、売買の指示や注文の予約を入れたりといったことで、本業とは明確に切り離しています。しかし、もしこれらも副業として認めと、その時間や場所を明確にする必要があります。パソコンに向かって本業をしていると思ったら、FX取引をしていたということになりかねません。

【2】勤務時間の自主管理
本業の勤務時間と副業・兼業の勤務時間を纏めて労働時間とする場合、今の労働基準法の規程をそのまま適用することは不可能です。もし本業と副業それぞれで、現行の労働基準法で定める労働時間(1日8時間)を適用すると、極論ですが16時間勤務ということもあり得ます。また、本業は通常の勤務で、副業は土・日とすると毎週1日の休日付与という原則から外れることになります。企業で、どうやって労働時間や休日の管理をするのか、あるいは本人に任せるのか、難しい問題です。

【3】企業機密の漏えい
特別なスキルや、付加価値の高い情報を有する人が、もし副業先にその情報を洩らしたり、あるいはそのスキルや情報を使って本業先に背任となる行為をしたり、逆に副業先を悪用して大きな利益を得たりすることが考えられます。本人にその意図がなくても、結果としてそうなる可能性もあります。類似する業種への副業を禁止する、あるいは本業の企業では副業先を確認する、またその逆も同様の対応が必要かもしれません。それでも、複雑化した今の時代に、完全にチェックすることは難しいかもしれませんね。

【4】業務中の事故(労災時)の補償
もし、本業・副業どちらかで業務中の事故が発生した場合、労災は勤務していた事業所側で適用となりますが、片方では労働力に欠員が生じたり、もしかすると業務に大きな支障が出る可能性があります。その事故が事業主の故意や過失で発生した場合、一方の事業主は「ああそうですか、仕方がないですね」で済ませることができるでしょうか。

労働力が不足し、政府も「働き方改革」として、副業・兼業を容認・促進する意見がでています。ただ、こういった問題をクリアしておかないと、大きなしっぺ返しとなる可能性があることを認識しておかなければいけませんね

※写真は達磨寺境内にて(京都市上京区)

2017年12月02日 09:39
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